甘いペットは男と化す
 
「ごめん……」


やっぱり、ケイにとっては、あまりいいことではないよね。
今の彼女が、昔の彼女に会いに行くなんて……。


「べつに。もう俺には関係ない人だから」


そう答えたケイは、どこか拗ねた子供のように見えて……


「ケイ……」


あたしはそっと、そっぽを向いてしまったケイの背中に抱き着いた。


「何?」
「……理由が…あったんだよ……。相内先生には……」
「……」


理由があると言ったことは、相内先生があの時、お父さんからお金を受け取ったこと……。

どうしてあたしが、そんなことまで知っているのかを、ケイは問いたださなかった。


相内先生が、お父さんからお金を受け取ってケイと別れた、と言ったときは、正直ショックを受けた。
その台詞を言った先生の顔が、怖いくらいに冷静だったから……。


けど……



(私にも、その強さが欲しかった)



あの時の言葉の意味が、今になって理解出来た。
 
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