甘いペットは男と化す
 
「景はまだ23という若さだ。可能性だって大いにある。
 君みたいな取り柄もない女に、うつつ抜かされている暇はないんだ」


ああ、もうどうしよう……。

どうしようもなく腹が立つのに、何一つ言い返せない。


「だけどバカだとは思っていない。
 自分がどうするべきか分かっているだろう?」

「……」

「話はこれだけだ。お金が受け取れないというなら、今はいい。
 だけど欲しくなったらいつでも来なさい。今入っている分は必ずくれてやろう」


その言葉と同時に、開かれたドア。
もう出て行けという合図。

力をなくしたあたしは、悔しくて唇を噛みながら車を降りた。



今、ようやく相内先生のとった行動の意味が分かった。


相内先生は、お金に目がくらんだわけでも
お父さんの気迫に負けたわけでもなかった。


ただ……



「…くやっ…しぃっ……」



自分の立場をわきまえただけだったんだ……。
 
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