甘いペットは男と化す
「ケ……」
「でも諦めない」
何か声をかけようと名前を呼ぼうとしたら、ケイは顔をあげ、今度はいつもの自信を取り戻した笑顔を向けた。
「今回は確かにダメだったけど……最後まで必死になれた。
8本目とか、時間ギリギリだったし。
だから後悔なんかしてない。自分を成長させられたしな」
「ケイ……」
「だから絶対に親父を見返せるように仕事で結果出すから……。
結婚相手とか、でかい家がもつ会社とか……そんなのなくたって、自分の力で会社は大きくできるって……。
親父にそう見せつけてやる」
ケイの瞳は、勝気で……自信気で……
少年の瞳を持ちながらも、大人の野望もともに持っていた。
「今日はこれを伝えたかっただけ。
結果はダメになっちゃったけど、俺は絶対にアカリを手離す気なんかないって」
「……っ…うん」
「なんで泣きそうになってんの」
「だってっ……」
ケイの意気込みに、感動してつい涙ぐんでしまった。
弱気になっていた自分が恥ずかしい。
プレッシャーに押しつぶされかけていた自分が情けない。
あたしの愛した人は、こんなにも前向きなのに……。