甘いペットは男と化す
 
「お願いだから、涙見せないで。
 この場で襲いたくなるから」

「バカっ……」

「でもキスはする」

「んっ……」


顎を捕えられ、お互いにパワーを分け与えるかのようにキスを交わした。


暗がりがあたしたちを消してくれることを祈って
住宅街の往来で恥ずかしいくらいのキスをする。


「やっぱしなきゃよかった……」
「え……?」
「余計に襲いたくなったし」
「もうっ……」


おでこをこつんと合わせて、お互いに笑い合った。


あたしも今のキスでケイが欲しくてたまらなくなった。

だけど今するべきことはそれじゃないから……



「じゃあ、会社戻るね」
「うん。頑張って」


時間はもう22時を回っている。
それでもケイは会社へ戻ると言う。


今のあたしたちに必要なのは、
力では確かに負けているケイのお父さんを越えることだ。
 
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