甘いペットは男と化す
22章 押してしまった背中
「まさか、本当に来るとはね……」
「お願いします。あたしを先生のように完璧に英語を話せるようにしてくださいっ」
深々と頭を下げて、目の前の人にお願いをした。
あたしの前には、目を丸くさせてあたしを見つめる彼女。
それは、相内先生だった。
「そんな頭を下げることなんてないわよ。生徒として見ろってことなら、私はそれが仕事だし。
だけどやりにくくないの?あなたは」
「そりゃ、確かにいろいろ気になることはあるけど……
でも相内先生に教えてもらいたいんです。ケイのこと関係なくして、先生の話す英語が好きで……」
「それは嬉しいわね」
「それと先生なら、あたしに容赦なく教えてくれそうなので」
「え?」
最後の言葉に、思わず半笑いで先生は聞き返していた。
確かに英語を習うのなら、べつにここの英会話教室じゃなくたってよかった。
だけどわざわざこの教室を選び、相内先生を指名したのは……
「とにかくできるだけ早く、英語をマスターしたいんです。せめて通訳とかいらないくらいの……。
ケイのお父さんを見返してやりたいから」
先生なら、ケイの事情を知っているからだ。