甘いペットは男と化す
「……そう。景のお父さんをね……。
でも英語を完璧にしたところで、何か見返せるの?それなら私だって、あの当時からできたわ。
景の家庭教師を任されてたくらいだし」
「もちろんそれだけのつもりはないです。自分のレベルを上げるためなら、他のことにも挑戦します。
そのうちの一つが、英語なんです」
確かに、言われてみれば相内先生は家庭教師をやっていたくらいだから、それなりの頭脳も器量もあったはずだ。
だけどケイのお父さんには認めてもらえなかった。
あたしがこれからやろうとしていることは、相内先生のスタートラインよりもずっと下からなんだ。
それでも……
「何かを始めないと、いつまでもケイの隣には並べないですから」
ただどうしようと、立ち止まってばかりでは時間は過ぎていくもの。
何をしようか考えている間にも、絶対に無駄にはならない英語だけは始めていてもいいと思ったから……。
「ほんと……羨ましいくらい、頑張れる人なのね」
じっと見つめるあたしに、相内先生はフッと力を抜いて微笑んだ。
ケイのためなら、あたしはいくらだって頑張れるだろう。
「言っておくけど、私はスパルタよ。無料体験のようなものだとは思わないで」
「わかりましたっ……」
そして今日から、相内先生の授業が始まった。