甘いペットは男と化す
意外にも、相内先生はあたしの質問に驚いた顔はしていない。
それを聞かれることがあるだろうと、予想していたように見える。
先生は困ったように微笑むと、答えてくれるらしく口を開いた。
「………嫌われたかった、から……かな」
それは、悲しみの微笑へと変わった。
「嫌われたく……?」
「うん……。
私がお金を受け取れば、景は絶対に私を恨むでしょ?
そうすれば……景が私を追ってくることはないと思ったから」
「そん、な……」
初めて知る、相内先生の心情。
やっぱり、先生は、お金に目がくらんだんじゃない。
自らケイに嫌われようとする方法をとったんだ。
「お金はね……実はそのあと、ちゃんとお父さんに返してるの。
だけど景にはそのことを黙っててほしいって言って……。
そしてもう二度と、景の前には現れないと約束もして……」
「……」
「私には、強さも力もなかったの。
景だけの人生にする覚悟もなかった。
だから……逃げたのよ」
あたしはバカだ。
恋敵になってしまうと分かっていながらも、今、相内先生の背中を押したいと思ってしまっている。