甘いペットは男と化す
 
「ようやく触れられた……」


頭に顔をすりよせ、匂いと温もりを確かめるように抱きしめるケイ。

一瞬のことでちょっとだけ驚いてしまったけど、あたしもすぐにケイの背中へと腕を回した。


ケイだ……。
大好きなケイの匂い…温もり……。

決して大きくはないのに、包み込まれるように安心するのは、あたしがケイに何もかも許しているから……。


「試験、いよいよ2週間後だっけ?」
「うん……」
「絶対に受かれよ」
「プレッシャーかけないで」
「アカリなら大丈夫だから」
「……うん…」


ケイにそう言われると、本当に大丈夫な気がした。

試験というのは、秘書検定のこと。
いよいよ2週間後に一次試験があり、それが受かれば実技を踏まえた二次試験がある。

それが受かれば……


「早く、ケイと同じ土台に立ちたい」
「待ってないから」
「え……」
「だから追いかけてきて。立ち止まって待つなんて、そんな生ぬるいことしないよ」
「もう……分かったよ」


本当にケイらしい答えだと思った。

ケイはあたしを甘やかさない。
だけど甘ったるい愛をいっぱい与えてくれる。
 
< 321 / 347 >

この作品をシェア

pagetop