甘いペットは男と化す
最終章 支え合い
「ほら、いつまでやってんの。置いてくよ」
「ちょっと待ってよっ……」
慌ただしい朝。
何もなくなった部屋のクローゼットを閉めて、玄関先にいる彼を呼び止める。
「だって何か置き忘れてたら嫌じゃん。取りに来るのなんて、大変だし……」
「そこはもう何度も見てるから。それで忘れてたら、ド近眼ってことだよ」
「あのねえ……」
相変わらず、普段の口ぶりは可愛くない。
小生意気で人を見下しているような感じで……。
「そんなことより、早く行かないと新幹線乗り遅れるよ」
「それは困るっ……」
それを聞いて、あたしも慌てて、最後に取り残されている靴を履いた。
住み慣れたマンション。
205号室。
今日あたしとケイは名古屋へと発つ。