甘いペットは男と化す
 
「次の家は1LDKだっけ?」
「そう。寝室とリビングは分けたいでしょ」
「お互いの部屋はないんだよね」
「当たり前。必要ないから」


さらりと返すその言葉も、なんだかくすぐったく感じる。


「ベッドは?」
「ダブル1つ」
「そこはシングルじゃないんだね」
「狭いほうがくっつけるけど、体痛めるから」
「ふふっ……」


そう言いながらも、きっとケイはあたしを抱きしめながら毎日寝るに違いない。

それは確信していた。


引っ越しはしなかったけど、ケイはほとんど毎日あたしの部屋へと帰っていた。

もちろん、支社長になるにあたって、やらなくてはいけないことが多いので、帰ってくるのは遅かったけど。
でも前と違って、同じ職場になったので、ケイを見ることはない日は一日もなかった。


遅く帰ってきて、あたしが先に寝ちゃったときも、必ずあたしの首の下に腕を通して抱きしめる。
確かに身動きが出来なくて、下にしているほうの肩が痛くなったりするけど、温かい温もりに包まれていつも心地よく眠れていた。
 

「今度は会社と家、すぐ近くだから。
 ギリギリまでアカリを抱けるよ」

「あのねぇっ……」


道の往来で、そんなことをさらりと言ってしまうケイに赤面した。
 
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