甘いペットは男と化す
4章 押し込んでいた気持ち
またやってしまった……。
朝、目覚まし時計を止めて、上半身だけ起こした状態でうなだれる。
ベッドには、まだスヤスヤとあどけない顔をして眠るケイの姿が……。
あれだけ、ベッドに入ってくるなと言いながら、結局昨晩、あの寂しそうなケイを放っておくことはできず、自分のベッドへと招き入れてしまったのだ。
あの時は、今にも消えてしまいそうなほど、儚いと思った彼を、自分なりに必死に慰めようとしてただけだったけど……
「軽率だわ……」
前髪をくしゃっと握って、相手を起こさないようベッドから出た。
顔を洗って、仕事へ行く準備をした。
一緒のベッドで眠ったからと言っても、特別何かあったわけではない。
本当に、ただ抱き合って眠っただけ。
そもそも、ケイにはそういう知識があるのだろうか……。
年はおそらく、20歳を超えたくらいの男なんだから、知らないわけはない。
だけど記憶喪失ということで、そういった行為を忘れているのかもしれない。
現に、こうやって一緒に眠ったって、指一本触れてこないしね。
……いや、自分に魅力がないだけかも。
知識などは忘れてはいないということを思い出して、なんとなく凹んだ。