甘いペットは男と化す
「ケイ」
「んー……」
「仕事、行ってくるから」
「やだー」
「やだ、じゃないの。昨日の繰り返し」
「むー……」
目を閉じたまま、唇を尖らせるケイに、思わず笑ってしまった。
ほんと、大きな子どもだ。
「昨日みたいに、会社に来ないでよね」
「なんで?」
「会社は遊び場所じゃないの。そんな、知人がほいほい来ていいところじゃないんだから」
「……はーい」
ようやく瞼を開けて、寂しそうな顔で頷いていた。
「記憶、何か手がかりになるようなもの、探しにでも行きなよ」
「うん」
昨日の、寂しげな表情を思い出して、少しでも早くケイの記憶を取り戻してあげたいと思った。
一言そう声をかけると、本当に遅刻してしまいそうな時間だったので、
捨て犬のように目をうるませたケイを置いて、一人部屋を出た。