甘いペットは男と化す
「では、そちらでおかけになってお待ちくださいませ」
10時を過ぎると、アポイントを取りに来た取引先の人がやってくる。
一人ひとり対応して、笑顔で応対した。
…っと、社員さんの出席簿確認しなくちゃ。
外部だけの仕事があたしの仕事ではない。
内部調整も手にかけながら、自動ドアが開くと顔を上げる。
そんな繰り返しだった。
もうすぐお昼か……。
そういえば、朝ごはんとかお昼ご飯とか、ケイはどうしてるんだろう……。
何か適当に食べてればいいけど……。
自分が朝ごはんを食べない派だったから、朝ごはんのことなんか忘れていた。
だけど、さすがにお昼ご飯は食べなければ、夜までもたない。
まあ、ケイもいい大人なんだから、お腹が減れば、適当にコンビニとかで買ってくるだろうけど……。
……あーなんか不安。
あの子なら、あたしが帰ってくるまで、何も食べなさそうだわ。
記憶の手がかりを探しに行けとか言ったけど、下手に外に出たら迷子になりかねないよね。
いや、でも昨日はこの会社まで来れたんだし……。
そもそも、本当に家族の人は、ケイのことを探してないわけ?
「……」
ぐるぐると、頭の中がケイ一色のことでいっぱいになる。
頭痛くなってきたし……。
ズキズキと痛くなってきた頭に限界を感じ、ひとまずケイのことを頭の中から取っ払うことにした。