甘いペットは男と化す
「言ったでしょ。
アカリが泣くとき、傍にいるって」
「だから泣いてなんか……」
「いいじゃん。泣いたって。
胸の中にしまいこんでいるより、吐き出しちゃったほうがよっぽど楽になれるよ」
「……」
いつも子供で、無邪気なことばかりしているはずなのに、
今あたしを抱きしめるケイの温もりと言葉は、あたしよりもずっと大人に感じてしまう。
我慢して強がっていた自分を、解放していいことを許される気がして、じわじわと悲しみの心が湧き上がっていく。
「泣き顔、見られたくないっていうんなら、ずっと後ろから抱きしめてるから……。
だから今は思いきり泣いていいよ。
理由は、辛いでも悔しいでもなんでもいいじゃん。
泣くことに意味があるんだから」
「……っ…」
ほんと……悔しいよ……。
こんな子供の言う言葉で、感情がどんどん露わになってしまうなんて……。
流すまいと必死に堪えていた大粒の涙が、ついに頬を伝って枕に沁みこんだ。
その途端、弾けたように涙が次々とあふれ出てきて……
「…ぅっ……っ……」
あたしは、淳史と別れて、初めて涙を流した。