甘いペットは男と化す
「ふぅ……」
熱いお湯が体に沁み渡り、2日分の汚れが落ちた気分だった。
洗濯したスウェットに着替えて、脱衣所を出ると……
「きゃっ……」
突然奪われた視界。
驚いて顔を上げた先には……
「よかった……。
どこか行っちゃったのかと思った……」
泣きそうなほど、顔を歪めたケイがいた。
「どこにも行かないよ。
ちょっとシャワー浴びてただけ」
「うん……。
でも起きたらアカリの姿がないから、いなくなったのかと思った。
元彼のこと思い出して、そっちに行っちゃったんじゃないかって……」
それを言われて、昨晩の、ケイの前で泣きじゃくっていたことを思い出す。
途端に照れくさくなって、ケイの体を押しやると、髪をバスタオルでゴシゴシしながら顔をそむけた。
「それはないよ。
それに、もし元彼とやり直すことになったとしても、ケイをすぐに追い出したりはしないから安心して」
さすがに、あんな醜態をさらけ出してしまったこともあり、今さらどうこうしようとは思っていなかった。
ケイに完全に背中を向けると、
「やり直すのも嫌だ」
真っ直ぐとした声を、言い投げられた。