甘いペットは男と化す
「え……?」
「アカリが、元彼とやり直すなんて嫌だ」
「だ…から、やり直すことなんてないよ。安心して」
その言葉に、どんな意味が含まれているのか分からなかったけど、振り返った先にいるケイの瞳を見て、思わずはぐらかそうとしてしまった。
子どもの顔と思っていたその瞳が
男の顔へと代わっている気がして……
胸がドキドキと高鳴っていく。
「俺は、アカリとずっと一緒にいたい」
「それは……。
さすがに、新しい彼氏が出来たら……無理かな」
「じゃあ、作らないで」
「何それ。あたしに一生独り身でいろってこと?」
「だから、俺がずっと一緒にいるって言ってるじゃん」
「あのねえっ……」
あまりにも直球な言葉に、つい感情的になりそうになった。
だけど相手が記憶喪失だということを思い出して、なんとか平常心を取り戻す。
「ケイは今、記憶がないからあたししか見えてないだけだよ。
思い出したり、ほかに経験を積んでいけば、もっと別の世界が見えてくるから」
「……」
その言葉に、ケイは頷くこともせずに、ただじっとあたしの顔を見つめている。