甘いペットは男と化す
 
薄茶色のビー玉のような瞳。

あどけなく、無邪気に思えていたその瞳が、今はあたしの瞳を逸らすことを許さないほど力を持っていて……



「他の世界なんかいらない。

 俺はアカリがいればいい。
 アカリに俺を見てもらいたくて、元彼のことで泣いてもらいたかったんだ」


「……っ」



こんな熱狂的な告白、生まれて初めてされた。


相手は出逢ってまだ間もない、年下の男の子。
記憶もなく、身元すら分からない。

昨晩までは、確かに淳史への想いを再確認していたはずだったのに……。



「だからそれは、今だけだってっ……。

 そういうセリフは、記憶を取り戻してから言って!」


「……」


吐き捨ててしまってから、後悔する。

記憶を取り戻してから、なんて……
そんなの、本当に戻るかどうかも分からないのに……。


「……うん、分かった。
 今日も記憶探しに行ってくる」


ケイは一瞬顔を歪め、まだ日が昇ったばかりの外へ出て行ってしまった。



「……もう…なんなの……」



あたしの心臓は、いまだかつてないほど、ドキドキと忙しなく動いていた。
 
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