甘いペットは男と化す
 
「ただいま」
「おかえり」


同時に家に着いたのに、あたしを「おかえり」と迎え入れてくれたケイ。

家に入ってから気が付く。
ケイの右肩には、うっすらと雪が積もっていたことに。


「え、もしかしてケイ、すごい濡れてたんじゃないの?」
「そうかな?気づかなかった」
「もうっ……。
 とりあえず、コート脱いで。部屋も暖めよう」


あたしのコートもいくらか濡れているけど、ケイの濡れ方とはわけが違う。
明らかに、傘をこちら側に傾かせてくれて、かばってくれたと分かる。

だけど天然なのか、とぼけているのか。
ケイはよく分かっていない顔をしているだけで、コートを受け取るとハンガーにかけて窓際に干した。



「ご飯。買い物に行けなかったから、ありあわせのものでいい?」
「うん。アカリが作ってくれるものならなんでもいいよ」


分かり切っていた返事を聞いて、冷蔵庫を漁ると、使いかけの野菜がいくらかあったので、簡単にできる野菜炒めを作った。
あと、こんにゃくも見つけたので、干しシイタケを戻して、こんにゃくとしいたけの煮物を。

どれも時間を要さないメニューは、1時間足らずで出来上がった。



「今日は和食だね」
「そう。苦手?」
「ううん。きっと好きだと思う。いい匂いするし」


「いただきます」といって、ケイは箸で煮物をつまんだ。
 
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