甘いペットは男と化す
 
「うん!おいしい!」


と、この前のシチューの時のように感激の声をあげて、感想を述べてくれるケイ。

今回は、確かに味付けが自分流になっているということもあって、少し照れくさかった。


「でもよかった」
「何が?」
「アカリが普通に話してくれて」
「……」


人が、せっかく朝のことを忘れようとしているのに、まさかそれを蒸し返されるとは……。

朝の騒動……。
確かにケイに告白まがいなことをされて……。


「べつに……気にしてないよ」


記憶がないうちの告白は、気にしない。
じゃないと、戻った時になんだか傷つく予感がしたから。

ケイほどの人が、彼女がいないなんて思わない。
大切な人や、ケイのことを好きな女の子がいっぱいいる。

だからあたしみたいな、年上の女なんか、記憶が戻れば用なんてなくなる。


なのに、



「気にして。
 俺、本気だよ?」



大きな二つの瞳を、真っ直ぐとぶつけられると、ついその気持ちが薄れていってしまう。
 
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