甘いペットは男と化す
 
「だからっ……」

「記憶が戻っても、アカリのことは忘れない。
 だから今ある気持ちも忘れない」

「……」


まだ、半分ほどしかご飯を食べていないのに、すでに胸がいっぱいになって箸が止まる。


こんなのはずるい。
好きな要素なんて、どこにも見当たらないのに……


胸がドキドキとしないほうが無理だ。



「……あたしの、どこがいいわけ?
 ただ、偶然ケイを拾ったってだけでしょ」

「その偶然が生み出したんだよ。
 ほかに理由は必要?出逢いは必然じゃないといけないの?」

「それは……」


確かに…そうだ。

誰と出逢うのにも、それは一つの偶然から生まれる。

たまたま同じ学校になるのも、
たまたま同期として会社に勤めるのも、
たまたま……友達に紹介される相手でも……。



「俺はアカリが好きだよ」



もうあたしの心臓は、爆発寸前だ。
 
< 59 / 347 >

この作品をシェア

pagetop