甘いペットは男と化す
 
「ねえ」
「んー?」


夜、電気を消して、ようやくベッドとソファーとで別れて寝床についたところ、切り出しづらいと分かっていてもケイに話しかけた。


「記憶……どう?」


朝も、記憶を取り戻す手がかりを探しに行くといって、出て行った。
だからきっと、今日はいろいろなところを見て回っていたはずだ。


「んー……まだ全然……」
「そっか……」


ケイが家に来てから、もうすぐで一週間。
記憶が戻りそうな気配はどこにもない。

本当に、もしこのまま何も戻らなかったら、この先どうするんだろう。


「ケ……」
「海」
「え?」


だけど、ケイの口から意外な言葉が飛び出た。


「海に行きたい」
「は?」


まさかの海!?

季節は雪が降るほどの真冬。
今、海になんか行ったら、凍死する勢いだ。
 
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