甘いペットは男と化す
どこ行ったんだろう……。
もしかして、ケイも寒くて上に上がったのかな。
そう思い、もう一度階段を登って、塀の上へ上った。
塀の上は、今は開店していない海の家があって、その横に自販機。
少し先を行けば、もう車が通る道路だ。
「……いない」
辺りを一周してみたけど、やっぱりケイはいなくて、急にあることを思いついて青ざめた。
もしかして、海に入っちゃったとか!?
ハッとして、もう一度塀の上から海を眺めた。
そこには、綺麗な青というよりは、寒々しそうな紺の海が広がるばかりで……
白い波が時折しぶきをあげている。
まさか、こんな真冬の海の中に入る人なんかいない。
だけど、普段の子供すぎるケイの行動をみたら、考えられなくもなくて……
「ケイっ……」
あたしは慌てて、階段を駆け下りた。
「ケイーーー!!」
海に向かって、ケイの名前を叫ぶ。
だけどその声は、波の音によってかき消されてしまった。
「ケイー!!」
ドキドキと胸騒ぎだけが起きて、ただひたすらケイの名前を叫び続けると……
「アカリ?」
後ろから、聞きなれた声が聞こえた。