甘いペットは男と化す
 
「ほんとだ。結構ここだと、寒さ感じないね」
「でしょ?」


それから、ケイに言われた通り、階段の下へ移動した。

そこは、決して暖かいというわけではなかったけど、風をもろ受ける浜辺に比べたら、断然マシだった。


「でもアカリが、こんなに俺のことを心配してくれたって思うと、なんだか嬉しいね」
「……」


ようやく、あたしが焦っていたことの事情を把握したケイは、さっきからニヤニヤしっぱなし。
その顔を見ていると、なんだか悔しくなる。


「俺がいなくなったら寂しい?」


首を少しだけ傾けて、じっと見つめてくる瞳。

不覚にも、ドキドキしてしまう自分がいて……


「さあ……。どうだろうね」


素直になれず、目を逸らして答えた。



自分でも驚いてた。

まさかこんなにも、ケイのことを必死に探してしまっていることに……。


ケイを探していたのは、ただの責任感。
もし何かあったら、ここに連れてきた自分に非があるのだと感じてしまうから。


ただ、それだけなんだと
言い聞かせている自分がいた。
 
< 67 / 347 >

この作品をシェア

pagetop