甘いペットは男と化す
 
「アカリ」
「何?」


ただ、海をぼーっと眺めていると、何かを思い出したかのようにケイがコートのポケットを漁った。

スッと差し出された手のひら。
気になって目線をそっちへ向けると……


「……綺麗…」


その手のひらの上には、ピンク色の桜貝が置かれていた。


「アカリにあげる」
「……ありがとう」


もらっても、確かに困る。

けど、なぜだか温かくなる気持ち。
手のひらに置かれた淡いピンク色の桜貝。


「アカリのイメージにピッタリだと思った」
「え?」
「可愛いってこと」
「……」


どうしてこの子は、恥ずかしいセリフをさらりと言ってしまえるんだろう。


もともとの性格?
それとも、記憶を失っているがゆえに?


この年になって、可愛いだなんて言われることは減って、久しぶりに言われた言葉に、柄にもなく照れてしまった。


「アカリ、照れてる」
「うるさいっ」


それをケイに読み取られて、桜貝をぎゅっと握ると、一人立ち上がった。
 
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