甘いペットは男と化す
「ケイ」
握ったケイの手のひらは、さっきからずっと冷えたまま。
あたしはぎゅっと強く握り直すと、ケイの髪を撫でた。
「大丈夫だよ。
どんな記憶があったって、あたしはここにいるから」
「……アカリ…」
その言葉に、ケイはようやく微笑んで、
握られた手のひらの体温がじわりと温かくなっていくのを感じた。
「アカリがそんなに優しくするから、俺はますますアカリを好きになっちゃうんだよ」
さすがにその言葉には照れくさくなって、合わさっていた視線を逸らした。
「もう……。
すぐに好きとか言うんだから……」
「だって仕方ないでしょ。
好きになっちゃったんだから」
当たり前に返される言葉。
ケイの口から吐き出される「好き」と言う言葉は、まるで挨拶のように日常茶飯事だった。
ストレートにぶつけられる想い。
照れることなく甘い言葉を吐く口。
あたしを見つめる優しい瞳。
それがあたしの知っているケイで……
《ごめんね?本気じゃないから》
まさか氷のような冷たい瞳で、突き放される日が来るなんて思ってもみなかった。