甘いペットは男と化す
「だ、からって、必要以上に部屋で迫るのは禁止だからね!
ちょっとでも手ぇ出して来たら、即追い出してやるんだから」
「それは困る」
と言いながら、口調は全然困ったように見えない。
何この変貌ぶり。
急に振り回されてる感じで、嫌なんだけど……。
もしかして、思い出しかけた記憶のせいで、本来のケイが出てきたってこと?
……じゃあ、もともとのケイって、実は女たらしだったりして……。
「……」
じっともう一度ケイの横顔を見てみる。
あたしからしてみたら、年下だからこそ、可愛いと捉えてしまうけど、きっとタメだったり年下の人から見れば、かなりモテ要素を含んだ容姿だ。
身長こそは、そこまで高くないけど、顔が小さいからその分脚も長く見える。
目は羨ましいくらいパッチリ二重だし、ハーフと思えるほどの鼻の高さ。
髪も染めたことがなさそうな、ダメージ一つないサラサラな黒髪。
……ああ…。これ絶対にもともとタラシの性格してるわ。
勝手に自己完結した。
「今度は何?人の顔、じっと見て」
「ううん…なんでもない」
一人で自己完結して、ちょっとだけうなだれた。
そんなあたしの様子を、不思議そうに首をかしげながら隣で歩いている。
「……朱里っ!?」
だけど、そんなあたしを誰かが呼び止めた。