甘いペットは男と化す
「朱里っ!」
手が重なったところで、淳史もまた我に返ってあたしの名を呼んだ。
ゆっくりと振り返ったそこには、悲しそうな瞳をした淳史がいて……
「そいつは……朱里の新しい彼氏か?」
それを言われて、まだ頷けない自分。
確かに彼氏ではないし、それどころか自分の気持ちすら見えない。
だけどこの場は、「そう」と言ったほうが事がおさまるのだろうか。
意を決して、頷こうとしたあたしを、グイとケイが引っ張る。
「そんなの、元彼さんには関係ないでしょ」
だけどあたしの代わりに、ケイが冷たい声で言い放った。
誰も何も言えなくて、
あたしはケイに引っ張られるまま先へ歩いていく。
後ろから淳史が追いかけてくることはなくて、気づけばスーパーに寄るはずだったのに、マンションへと着いていた。
「ごめんね、なんか…………」
ドアを閉めた瞬間、言葉を発しようとしたけど、その顔はぎゅっと胸に押さえつけられている。
あたしは、ケイに抱きしめられていた。