甘いペットは男と化す
 
「朱里っ……」
「ついてこないで」
「悪かったって!今のは言い過ぎたっ……」


自分の言動に後悔したのか、慌ててあたしを追いかけ手首を掴んだ。


「離してっ……」
「朱里!」


掴んだ手首を振りほどこうとしているのに、その力は虚しく押さえつけられ、淳史の胸に抱き寄せられた。


「やっ……」
「俺には朱里がいないとダメなんだよっ」


必死にしがみつくみたいに、あたしを強く抱きしめ、情けない愛の言葉を吐く。


そんなふうに言うのなら、どうして二股なんかかけてたの?
どうしてあたし以外の人を、あの家にあげたの?

あたしとの予定をキャンセルし続けていたのは、もう一人の彼女とイチャイチャしてたからなんでしょ?


大好きだったこの腕。
大好きだったこの声。


「朱里……」


抵抗をやめたあたしの体を、淳史がゆっくりと離した。
 
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