甘いペットは男と化す
真っ直ぐと瞳を捕えて答えるあたしに、淳史はもうそれ以上何も言わなかった。
解かれた腕。
一歩下がって、もう一度小さく「ごめんね」とつぶやいた。
泣きたくなるほど胸が痛くなったのは、やっぱりあたしも淳史のことが好きだったから。
でも今言った言葉に、嘘はなくて……
好きとか恋愛感情とか、今はそんなのどうでもいい。
今あたしが傍にいたいのは……
「あ、おかえり。アカリ」
玄関を開けると、パタパタとしっぽが見えるほどの笑顔で迎え入れてくれる男の子。
「どうしたの?走ってきたの?」
言われて気が付いたのは、あたしの息は声を発するのが難しいほど切れているということ。
ケイは心配そうに近づいて、ただ息継ぎをするだけのあたしをじっと見つめる。
「変な男に追いかけられた?
これから駅まで迎えに行こうか?」
何も話さないあたしに、ケイはただうろたえるばかりで、そんなケイを見て、心から愛しいと思った。
「アカリ?」
「…っ」
あたしはたまらず、ケイに抱き着いた。