甘いペットは男と化す
 
「どうしたの?嬉しいけど」


ケイはうろたえながらも、しっかりとあたしの背中に腕を回してくれている。


認めたくなんかない。

好きとか恋愛感情とか、そんなのないって言い聞かせて
この子はただ、大切な人なんだと捉えてた。


だけど気づいてしまう。


さっき淳史に抱きしめられたときには、何も感じなかった胸のときめき。

なのに今、ケイに抱きしめられ、あたしの鼓動は忙しなく動いていく。



「生意気……。ペットのくせに」

「それ、意味わかんないんだけど」



思わずつぶやいてしまった言葉に、ケイは怒ることなく耳元で笑っている。


好きになる理由なんて分からない。
ときめきポイントなんて分からない。


傍にいて、一緒に笑い、一緒に泣いて、一緒の時間を過ごす。


もしかしたら、それだけで十分なのかもしれない。
 
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