甘いペットは男と化す
「財布と携帯は持ってたからね、一応親に連絡してくれたみたいなんだけどさ……。
母親は数年前に家を出てったみたいで。
父親は……俺とは縁を切ってたんだって」
「……」
どうしよう……。
かける言葉が見つからない。
もっと軽い事情かと思っていたけど、予想していた以上に深くて重い……。
「あ、だけど、親ってこともあって、入院費と治療費は払ってくれたよ。
それにその時、父親ともちゃんと話をしたし」
「そうなの?じゃあ、縁を切ったこともなしに……」
「……ううん。なんか……その時話してて分かった。
俺とこの人は、そりが合わないってこと。
記憶も思い出も何もないけど……多分、この人とは根本的に話が合わないんだって」
「……そう…」
その結果は、ケイの顔を見ていれば分かった。
結局、二人は親子の縁を切ったまま。
そして怪我の治療も終わり、退院することになったケイは、家に帰ることなく、唯一自分の記憶に残っているこのマンションに来て……。
「ここ……。ケイの大切な人でも住んでいたのかな……」
「……」
なぜだろう。
自分でそう言って、胸がチクンと痛くなった。