甘いペットは男と化す
「何、それっ……。
それにあたし、まだケイのこと、好きかなんて……」
「好きになってよ。俺のこと」
強引な言い回し。
いつも子供っぽいくせに、こうやってたまに男になる。
振り回されたくなんかない。
流されたくなんかない。
そう思っているのに、
じっと捉えた二つの瞳から、目を逸らせられない。
「アカリ」
いつから、彼に呼ばれる自分の名前が、好きになったんだろう。
きっぱりと言い放たれるその言い草が、
ペットのくせに、ご主人様に呼ばれる気分になる。
「嫌なら、避けて」
髪を撫でていた指は、そっと上に回って頬を撫でる。
感触を確かめるように、綺麗な親指があたしの唇をなぞった。
そして……
「……」
小さな唇が、
あたしの唇を捕えた。