甘いペットは男と化す
 
「アカリ」
「んー?」
「これって、デートだよね」
「……」


夕方、いい加減家にいることにも飽きて、思いつきのように外へ出た。


(ケイの服を買いに行こう)


今、ケイが着ている服は、外に出るときは最初に着ていたもの。
家にいるときは、あたしが貸しているスウェットのみだった。

だから、もう数着、服があったほうがいいだろうと思い、ケイを連れて街へ出たのだ。


「そ、そんなんじゃないよ」
「でもこうやって、一緒に街中を歩くことを、デートって言うんでしょ?」
「それは……」


言われてみれば、確かにそうだ。

付き合っていなくても、その過程としてデートをするものだし。


「ほら」
「あっ……」


勝手に掴まれた手。

その手を、指先が絡むように握られ、恋人つなぎをさせられた。


「これでデート」
「……」


にこりと微笑むその顔に、もう何も言えない。

あたし、完全に振り回されてるわ……。
 
< 94 / 347 >

この作品をシェア

pagetop