甘いペットは男と化す
 
「どういうのがいいの?」
「なんでも。アカリが着てほしいというもの」


言うと思った。

だからといって、これを責められない。
返ってくる返事は、自分がどういうのが好きなのかが分からない、だろうから。


でもあたしも、ハッキリ言ってメンズ物なんて分からない。
淳史は綺麗めなカジュアルを着ていたけど、多分あれは長身の淳史だからこそ似合っていたもの。
まだ20歳そこそこのケイが着たところで、多分しっくりこないだろう。


悩みに悩んだ結果、通り道にあった若者向けの服屋さんを見つけて、一緒に中に入った。


「ジーパンはとりあえず今のでいいしょ。とゆーか、高くて買えないし。
 Tシャツ2枚くらいと、パーカーを……」


本当は、もっとたくさん買ってあげたい。

けど、あたしはいたって普通のOLだ。
自分の生活で結構いっぱいいっぱいだったものを、食費二人分になったあげく、こうやって服を買ってあげるのにはかなりの切り詰めた生活。
むしろ、少し崩してるし。

だけど、これは、のちのちにちゃんと返してもらおう。

と思い込んで、適当な服をチョイスした。
 
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