甘いペットは男と化す
 
「これでいい?」
「うん」


本当に、いいと思っているんだろうか。

選んだものは、当たり障りのない、白とグレーのシンプルなTシャツ2枚。
紫と黒のチェック柄のパーカーだった。


「意外。アカリが紫とか選ぶの」
「そう?わりと好きだよ。ネイビーとか」
「アカリはピンクのイメージ」
「……」


だから、さらりとそういうのを言うのはやめてほしい。

あたしだって、若い頃は、それなりにピンクは好きだった。
けど、この年になって、ピンクや黄色などの淡い色を着るほど、見境なくない。


「今度買うパジャマはピンクにして」
「なんで……」
「可愛いから」


ほんのりと笑うその顔は、からかっているようには見えない。
本心でお願いした、期待の眼差し。


「……気が向いたらね」
「やった!」


「嫌」と答えるはずが、ついそんな返しをしてしまう。

ピンクのパジャマなんて、恥ずかしすぎるでしょ。
 
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