甘いペットは男と化す
「……やっぱり、覚えがある?」
「どう、だろう……。でもなんか……変な感じがする」
確かに、ケイの様子はいつもと違っていた。
よく見ると、額にはうっすらと汗が滲み出ている。
やっぱりここは、ケイが記憶を失う前に、来ていたお店……?
結局、ケーキはやめて、温かい紅茶を2つ頼んだ。
ミルクと砂糖を入れて飲むあたしに
ストレートのまま飲むケイ。
いつもは、しつこいくらいいろんな話をふっかけてくるのに、ケイは無言のまま。
辺りを見渡して、ある一点の場所で視点が止まった。
「あそこ」
「え?」
「多分、座ってたのかも……」
「そう……」
ケイが見つめる先は、一番奥の半個室になっている席だった。
今はカップルらしき二人が座っているから、さすがに近寄ることは出来ない。
それでも、ケイはじっと見つめていた。