婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「待って なつさん…!」
芹香さんは私の腕を掴みながらそう言った。
「あの日 圭ちゃんがうなされながら呼んでいたのは、なつさんのの名前だった…。『あいつのとこになんか行くな』って私のことなつさんだと思い込んで手を掴んできたの…。私ね…許せなかった。こんなに圭ちゃんに思われているのに他の男と浮気したあなたのこと…。」
「芹香さん。それは…。」
「だから あの時、嘘ついたの…。本当は圭ちゃん 私のことなんてもう何とも思っていなかったけど…。でも あなたは、私の嘘を簡単に信じて圭ちゃんを手放した。だから あなたの負け…。もう手遅れなのよ なつさん…。」
芹香さんはフッと鼻で笑った。
「手遅れって どういう意味ですか…?」
私の問いに、芹香さんはお腹に手を当てながら答えた。
「私ね 妊娠してるの。勿論 圭ちゃんの子よ…。」
「うそ…。」
その瞬間、私の中で何かが音を立てるように崩れ落ちていった。
私は立っていられずに、その場にしゃがみこんでしまった。
「嘘じゃないわ…。圭ちゃんね 退院した日に私のこと抱いたの…。あなたの身代わりだったかもしれないけれど私はそれでもよかった。
圭ちゃんに子供ができたことを言ったら、ちゃんと責任とるからって言ってくれたわ。もう なつのことは忘れるから心配するなって。だからなつさん 今度こそ 諦めて…。」
私は、放心状態で何も考えられなかった。
もう 圭司は戻ってこない…。
私はふらふらとおぼつかない足取りで、もと来た道を歩き出した。