婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「すみません!」
私が振り向いて頭を下げると、「チッ」という舌打ちが聞こえた。
顔を上げると、黒のスーツ姿の男の人が私を睨みつけ、何も言わずに行ってしまった。
圭司の方を見ると、口だけで「ばーか」といって笑いながら車で去っていった。
また ドジな所を見せてしまった…。
それにしても、あの人 あんなに睨まなくてもいいのに…。同じ新入社員なんだから…。
私はそんな事を考えながら、会場の入口へと入っていった。
『ミラージュホテル入社式』
そう書かれた白いボードの横に、受けつけがあった。
私は列の後ろに並んだ。
今日は全国にあるミラージュホテルの新入社員がここ有楽町の会場で入社式に参加する。
ホテルの支店と部署ごとに、席が決められていた。
「ミラージュ東京 宴会部 瀬崎です」
「えっと 10列目の5番ですね。」
私は言われた席につき、キョロキョロと周りを見渡した。 まだ 集まっているのは半分くらいだった。
良かった…間に合って…。
ほっとしながら、ふと隣の席を見ると、先ほど道でぶつかってしまった男の人が座っていた。
うわっ 同じ部署だったんだ…。
外見は、キリッとした顔でスポーツでもやっていそうな感じだ。 けっこう格好いい方だと思うけど、性格はすごく悪そう。