婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「じゃあ 最後に一度だけでいいから、私のこと抱いて…。そしたら 全部忘れるから…。」
必死な顔の芹香に俺は覚悟を決めた。
このままじゃ 芹香は俺を引きずったまま、いつまでも前へ進めない。
「芹香 俺はもう二度と芹香の事を好きになることなんてない。もう いい加減こういうの辞めてくれ…。芹香と別れて、すぐに他の女に行くような薄情な男のことなんて忘れろよ!もっと自分を大切にしろ…。」
俺は冷たく言い放ち、泣いている芹香を玄関の前に残したままドアをしめた…。
芹香はドアの前で泣いていた…。
俺はずっと、ドア越しに聞こえてくる芹香の泣き声を聞いていた。
しばらくして、芹香は諦めたように去って行った。
そのあとすぐ、俺はニューヨークへと旅立った。俺が日本へ戻った時には、すでに芹香は会社を辞めていた。
風の噂で、芹香が再びバレーの道を目指すことを聞いた。
ロシアへと立つ日を、わざわざ今日にしたのは、偶然なのかどうかまでは分からなかったけれど…。
ごめんな 芹香…。
俺は、お前のことを本気で愛していたよ。
ちゃんと言ってあげられなかったけど…それだけは本当だから…。
バレリーナの夢 今度こそちゃんと掴めよ…。
俺は心の中でそう呟いた。
「ん… 圭司…」
赤信号のブレーキに反応したのか、助手席のなつが、目を閉じたまま呟いた。
俺はクスッと笑いながら、なつの寝顔にそっとキスをした。