婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
芹香さんから圭司の子供ができたと聞かされた時、無条件に芹香さんに負けたと感じた。
夫婦の絆なんて、生まれてくる赤ちゃんの存在には到底適うはずがないと思ったから…。
結局 あれは芹香さんの作り話だったけれど あの頃は、芹香さんとの赤ちゃんを抱いて、幸せそうに笑う圭司の顔を想像しては泣いていた。
私も圭司の赤ちゃんが欲しい…。
圭司が私の元へと戻ってきた今、その思いが私の中で強くなっていた…。
「ねえ 圭司は赤ちゃん欲しくないの…?」
圭司の胸に顔をすりよせ聞いてみた。
「うーん 今はいならいかな…。なつだってあと二年はいいって言ってたじゃん…。」
「うん そうだけど…。」
「なに 欲しくなっちゃた…?」
「いや 欲しいっていうか… そこまでじゃないけど…。」
なんだか 欲しいとはいい出しづらい空気に私は言葉を飲み込んだ。
「思いつきならやめとこう…。俺達にはまだ早いよ…。」
「う うん…。」
私はモヤモヤとする気持ちを抱えながら、返事をした…。
確かに私の仕事のことを考えたら、自分でも今じゃないのはよく分かる。産休を取るにしてもギリギリまて働くことになるし、けっこう今の環境ではきついかもしれない。研修やイベントの手伝いなどで、全国各地に行かされている今は特に…。
恐らく圭司は、それも考慮した上でああ言ったのだと思う…。
けれど、なんていうか、圭司が私との赤ちゃんを望んでいないのは悲しい…。
でも 贅沢言っちゃいけないか…。
やっと圭司との幸せな日々が戻ってきたばかりなんだから…。
私は、薬指に光る圭司とお揃いのリングを眺めながら、心の中でそう呟いた。