婚約者はホスト!?②~愛が試される時~

きっと私みたいなタイプは嫌いなのだろう。
それでも これから仕事を一緒にしていく仲間なのだから、挨拶くらいしておこうか…。

悩んだ挙げ句、私は彼の方を向いて声をかけた。

「あの 宴会部の瀬崎なつです。さっきは、すみませんでした…。」

私がそう言うと、彼はしばらくの間、私を見定めるように見ていたが、左手の薬指に目を留めて口を開いた。

「なるほどね さっきのは旦那か…。入社式そうそう男の家から朝帰りかと思ったけど…。」

それだけ言うと、彼はまた手元の資料を読み始めた。

なにそれ…。
こっちが、素直に謝って自己紹介までしたのに…。
なんて 感じの悪い人なんだろう。
私は、彼との会話を諦めて前を向いた。

入社式は滞りなく終わり、お昼を挟んで午後は会議室に移って研修を始めるらしい。

周りを見ると、さっそくお昼に行く人を誘い合っているようだった。
彼のところにも、友達らしき人が誘いに来ていた。

ちょっと出遅れちゃったかな…とため息をついたとき、後ろから肩を叩かれた。

「ねぇ 一緒にお昼行かない? 私 宴会部の真崎葵っていうんだけど…。」

ハキハキとした声で、ひとりの女子社員が声をかけてくれた。

「ぜひ…。私は宴会部の瀬崎なつです 」
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