婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
廊下を歩いていると、後ろから芹香の声がした。
「圭ちゃん! よかったら食べて。」
そう言って、芹香はお弁当の入ったビニール袋を俺に差し出した。
「芹香…。帰ったんじゃなかったの?」
「これ買いに出てただけ…。圭ちゃん お昼も食べてないでしょう…? 体壊すよ…。」
「ああ なかなか時間なくてさ…。これ ありがとな…。いくらだった?」
「いらない…。その代わり 今度ご飯連れて行ってくれる…?」
「芹香…。」
「はは 冗談…。そんな困った顔しないでよ…。」
そう言って笑った芹香の目は深い悲しみを帯びていた…。
そんな顔されても、俺はもう芹香の気持ちに何も答えられない…。
あの頃の俺だったら、迷いなく芹香の手を引きこの胸に抱きしめていたはずだけれど…。
芹香と並んで、静まり返った廊下を歩く。
営業室に戻ると、誰も残っていなかった。
この営業第一課では、商談をしてそのまま直帰
してしまうことが多い。
成績さえ達成してしまえば、残業などする必要がないからだ。
俺は自分の仕事の他に、今度の新作発表の企画を任されてしまった。
その為、連日の残業を余儀なくされていたのだ。
「それ、ひとつ私のだから…。」
そう言って、芹香はビニール袋からお弁当を取り出し 俺の隣の席にすわった。