婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
行き交う人の波をかき分けて、きょろきょろとなつの姿を探す。
暫くして、タクシー乗り場のベンチで男にもたれかかりながら眠っているなつを見つけた。
俺は、ゆっくりと二人のいる方へと向かった。
一緒にいる男は、なつがよく話していた松井くんなのだろう…。いつから こんなに仲良くなっていたのだろうか…。
なつの体には、彼のジャケットがかけられていて、まるで恋人同士のようだった。
俺が目の前に立つと、彼ははっとして顔を上げた。
「悪かったね…。なつが迷惑かけちゃって…。
松井くんだっけ…? これ ありがとう。」
そう言って、俺はジャケットを彼に返し、なつの体を抱き寄せた。
「いえ なんか こいつバカ正直に注がれたお酒全部飲んじゃたみたいで…。俺が気づいたときにはトイレのそばで潰れてて…。抜け出してここまで連れてきたんですけど、全然起きないから携帯勝手にかけちゃいました…。ホント危なっかしいですよね こいつ…。」
そう言って、なつを見つめる彼の目は明らかになつに好意を持っているように見えた。
「ありがとう 助かったよ…。 あと ブラダルフェアのことなんだけど、やっぱり…」
そう言って断わろうとした俺の言葉を遮って彼は言った。
「あっ 許可してくれてありごとうござます。
この仕事 新人の俺達にもチャンスもらったんであいつと一緒に張り切ってるんです。もし 採用されたら、ぜひ 見にきてください。」