婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「えっ? ああ 期待してるよ…。」
俺は、目を輝かせて言う彼を見て、自分の言いかけた言葉を胸の奥へとしまった。
なつもこんな顔で仕事をしているのだろうか?
「それじゃ ここで…。」
俺はなつを抱きかかえながら、タクシーへと乗り込んだ。
なつは俺に体を預けながら、すやすやと眠っている。
俺は、なつの髪にそっと触れながら、その無防備な寝顔を見つめていた。
なつもいつか芹香のように、夢を追って俺のもとから羽ばたいてしまう日がやってくるのだろうか…。そんな言いようもない不安が突然俺を襲ってきた。
だったらもう俺は、愛する人の背中など押したくはない…。
勝手だよな…俺。
なつのこと自由に何でもさせてあげたいのに、
俺だけの世界に閉じ込めてしまいたいと思っているなんて…。
こんな矛盾した自分に嫌気が差す。
それにこの余裕のなさはなんなんだろう。
さっきから、あの彼の顔がちらついて、イライラしてしまう。
俺の知らないなつの顔を、これからたくさん見ることのできる彼に、俺はたぶん嫉妬しているんだ…。
ごめんな なつ…。
こんな心の狭い俺で…。
俺はふーと息を吐きながら、なつに寄りかかるようにして目を閉じた。