婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
「なつ 気に入った…?」
後ろから声が聞えて、私は我に返った。
えっ?
今の甘い声って、もしかして松井くん?
私がきょとんとしていると、松井くんは私の腰を抱き寄せてにこりと微笑んだ。
「俺も早く、なつの花嫁姿見たいな…。」
松井くんは、婚約者を完璧に演じきっている。
「そうね。楽しみだわ。健人…。」
私も、松井くんに合わせてにこりと笑った。
「おふたりは、とっても仲がおよろしいんですね…。では、そろそろ披露宴会場の方もご案内しますね…。」
スタッフの女性は、私達を本物のカップルだと信じきったようだった。
「本日 ご案内させて頂くお部屋は最上階にございまして、窓からスカイツリーもご覧になれますよ。」
エレベーターの中でスタッフの女性が言った。
「へー 楽しみだな… なつ。」
松井くんが私の顔を覗き込みながら言った。
「うん。そうね…。」
でも、そろそろ、この小芝居も限界に近い。
ずっと松井くんに腰を抱かれて、かなり密着した体制を強いられている。
当の本人はケロッとしているが、これはもうセクハラだ。
ちょうど、スタッフの女性からも見えない位置にいたので、私は松井くんの手を掴んでぱっと払いのけた。すると、今度は反対の手を恋人繋ぎで握ってきた。私は、一瞬手を引こうとしたけれど、松井くんの睨みに負けて諦めた。