婚約者はホスト!?②~愛が試される時~

私は、室長の隣に並んで腕を組んだ。

「それじゃ 曲入れて-!」

音楽に合わせて、私と室長はバージンロードを一歩づつ歩く。

祭壇の前に立つ松井くんのところにたどり着いて、私は松井くんの腕に手をかけた。

誓いの言葉が終わると、松井くんは私の肩に手をかけ室長の顔を見た。

「室長…! キスもするんですか…?」

「ああ キスのとき上から花びらをまきたいから、やってみてくれるか…? もちろん ポーズだけでいいから」

そう
これは私が考えた演出。
花吹雪の中で誓いのキスをするのだ。
映画のワンシーンのようなキスをイメージして外人のモデルさんにお願いしてある。

でも ポーズと言えども、さすがにこれを自分でやるのは恥ずかしい…。
私が俯いていると、突然松井くんが私の顎を持ち上げて、顔を近づけてきた。
私が目を開けた状態で固まっていると、松井くんが耳元で呟いた。

「バカ ふりだけだから目を閉じろ。」

松井くんに言われて、私はゆっくりと目を閉じた。
唇には何の感触もないけれど、松井くんに本当にキスされているようでだんだんと顔が赤くなっていく。

「はーい お疲れさん!」

室長のかけ声と共に リハーサルは終わった。

「瀬崎さん大丈夫? 顔 真っ赤じゃない! まさか 松井くん 本当にキスしたんじゃないでしょうね…?」

駆け寄ってきた紺野さんが松井くんを睨んだ。

「してませんよ…! おい なつ そんな顔してたら俺が怪しまれんだろ…。」

「ごめん 恥ずかしくて…。」

私は、熱くなった顔を手で覆いながら化粧室へと逃げ込んだ。
< 86 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop