婚約者はホスト!?②~愛が試される時~
準備も目途がついて、ようやく解散となった。
ちょうど 9時をまわったところだった。
「もっと かかるかと思ったけど案外早く終わったな。」
松井くんと並んで従業員用の出口を出た。
「うん。本当。」
松井くんはあれから圭司の事には触れなくなった…。その代わり くだらない冗談を言っては私を笑わせようとしてくれる…。
松井くんの存在は、今の私にとって本当にありがたい…。
圭司は、来週の新作発表会の準備で相変わらず忙しそうだった。
でも今は、会えない寂しさよりも、ほっとする気持ちのほうが強い…。
「それにしても なつってキスする時さ、ああいう顔すんのな…。」
「ちょっと やめてよ~! もう忘れて…。」
私は思い出して、またかあーと顔が熱くなる。
あんなに大勢の人に、キスする顔を見られてしまったなんて…。いくら振りでも恥ずかしすぎる。しかも 至近距離で松井くんにバッチリみ
られてしまった。
「いや なつの顔がさ、あまりにも力入りすぎてて、俺 笑い堪えるの大変だったよ…。」
「も~う 失礼しちゃう!」
私は、松井くんの背中をバシッと叩いた。
「いて~」と言いながら松井くんがケラケラと笑った。
「なつ…!」
突然、後ろから圭司の声が聞こえた。
振り向くと、スーツ姿の圭司が立っていた。
「圭司! どうしているの…?」
私は、驚いて声を上げた。
「今日は早く終わったから迎えにきたんだけど…。」
圭司はそう言いいながら、隣の松井くんに視線を移した。