誘惑したい上司の条件〜真島果穂になりたくて〜
時間も忘れて資料作りに徹していると
カチャン…とドアが開くような物音がしたけれど
オフィスの鍵を持っているのは上司くらいだから新井課長がわざわざ予定を早く切り上げて戻ってきたか…
私が内鍵を閉め忘れて
帰ったはずの仲間の誰かが忘れ物でも取りに来たのだろうかと思い
パソコン画面から目を離さずに声をかけた。
「忘れ物ですか?」
「そうだ。忘れ物だな」
「ドジですねー…」
なんて
笑いながら答えたけれど
この声は
新井課長でもない…
仲間のものでもない。
そんな奴らよりも何倍も何倍も
聞きたくて仕方がなかった声。
に、似ていた気がして
作業していた手を止めたけど
顔が…
あげられない。
その代わりに
もしかしたら…
まさか?
なんて期待で
鼓動だけが異常に飛び跳ねる。