誘惑したい上司の条件〜真島果穂になりたくて〜
「くしゅんっ!」
雨に濡れたせいで寒い…。
風邪でもひいたらどうしてくれるんだろうか…。
降り止まない雨にため息をついて
タクシーでも呼ぼうかと思った時
遠くで私を呼ぶ声が聞こえた。
*******新井side*******
最近はゲリラ豪雨がけっこうあるから、念のために折りたたみの傘を持って来て正解だった。
「夕食はどうするかな…」
どっか適当な場所で済ませようかと歩いていると、向こう先でずぶ濡れになり、雨宿りしている彼女の姿が視界に入り思わず駆けだしていた。
「果穂さんっ!」
「あ、新井課長⁈寮ってこっちでしたっけ?
てか、傘持って来てるなんてさすがですね」
自分を見つけるなり、優しい笑顔を見せた、その表情に胸が高鳴り始める。
「ずぶ濡れになって…風邪、ひいちゃいますよ?」
「急に降り出した雨が悪いんです。
もし、これで熱でもだしたら、有給で休みたい」
本気なのか冗談なのか、笑いながら言う彼女に持っていた傘を差し出すと
彼女は一瞬、驚いた表情で俺を見つめた。