誘惑したい上司の条件〜真島果穂になりたくて〜
こんなどしゃぶりの中で、一本しかない傘を借りるなんてできるわけないに決まってるのに
それを断ると、新井課長は突然、見たことのないほど、真剣な眼差しで私の瞳を捕らえた。
「俺は…年下ですけど、男です。
こんなことくらいしかできないけど、好きな女性がどしゃ降りの中雨宿りしてる姿を見て、自分の傘を渡せないなんて情けない。」
…
…
好きっ⁈
どういうこと⁈
「えっ⁈ちょっ…なに⁈今…なんて?」
「前にも言いましたよね…
一目惚れをしたって。
冗談だと思ってました?」
真っ直ぐ
真剣に
好きだなんて…
冗談というか…。
いろいろあって、すっかり忘れてましたっ‼
「ほ、本気ですか…?」
アスファルトを強く打つ雨の音だけ響いて
視線を捕らえられたまま
静かな沈黙だけが二人を包んで
…
…
なんで何も言ってこないんだろう。
逆に緊張するし‼
な気分で
鼓動が加速する。