誘惑したい上司の条件〜真島果穂になりたくて〜


こんなどしゃぶりの中で、一本しかない傘を借りるなんてできるわけないに決まってるのに


それを断ると、新井課長は突然、見たことのないほど、真剣な眼差しで私の瞳を捕らえた。




「俺は…年下ですけど、男です。


こんなことくらいしかできないけど、好きな女性がどしゃ降りの中雨宿りしてる姿を見て、自分の傘を渡せないなんて情けない。」










好きっ⁈


どういうこと⁈



「えっ⁈ちょっ…なに⁈今…なんて?」


「前にも言いましたよね…


一目惚れをしたって。

冗談だと思ってました?」


真っ直ぐ

真剣に

好きだなんて…


冗談というか…。


いろいろあって、すっかり忘れてましたっ‼


「ほ、本気ですか…?」


アスファルトを強く打つ雨の音だけ響いて


視線を捕らえられたまま


静かな沈黙だけが二人を包んで










なんで何も言ってこないんだろう。

逆に緊張するし‼



な気分で


鼓動が加速する。



< 134 / 201 >

この作品をシェア

pagetop